24/9/7【ispace】月面探査を目指す日本のスタートアップ企業 水資源探査、月への輸送プラットフォーム構築を目指す

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    取締役 CFO 野﨑 順平 氏
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    ispace
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講演のポイント

AGENDA

野﨑 順平 氏(以下、野﨑)当社は日本から生まれて、日本で初めて民間企業として月面探査ミッションをやっています。本日は4つに分けてご説明します。

 

2022年にミッション1という、会社として初めて月に向けた打ち上げミッションを行いました。1点目はそちらの様子をご説明します。

 

2点目と3点目が本日1番お伝えしたいことで、そもそも当社がどのようなビジネスをして、売上収益を出そうとしている会社なのかについてご説明します。当社は世界でも競争に勝っていけるトップランナーだと思っています。なぜ当社はそれが可能なのかについてもご説明します。

 

最後に、2024年に2回目のチャレンジとして、ミッション2を行います。こちらについても少しだけご説明します。

2022年ミッション1の総括。

2022年ミッション1の総括についてです。

当社がSpaceX社のロケットを使って打ち上げた時の様子や当社のランダーから撮った月面の様子、ミッションコントロールセンターという管制室の様子をご覧いただける動画がこちらです。

 

 

動画はミッション1の様子です。前半は少しCGも使っていますが、後半でご覧いただいた月の様子は、当社のランダーから実際に撮った動画を38万km離れた地球まで送ったものです。

 

 

こちらの写真も、当社のランダーが高度100km付近から捉えた月面の様子です。地球では太陽の日の出と日の入りがありますが、月から見た地球の入り(地球が沈んでいく様子)を捉えたものです。こちらは実に特殊なところがあり、地球の少し南半球(オーストラリアの辺り)に黒いシミがご覧いただけるかと思いますが、こちらは偶然、南半球での日食を捉えたものです。たまたま発生している様子を捉えた非常に貴重な写真です。世界でもこの写真は非常に高く評価いただいています。

 

 

次の写真は、少し離れた2,000km付近から撮影した写真です。ご覧の通り、月は非常にでこぼこしている灰色の天体であることがわかります。

 

 

こういった動画や写真は、これまではNASAやJAXA等の宇宙機関でしか撮ることができず、初めて民間企業によって撮ることができた動画や写真になります。このようなものを撮ることができたのが2023年です。

 

ご存知かもしれませんが、その後当社は月面に着陸を試みたのですが、残念ながら着陸をすることができませんでした。本日は「なぜできなかったのか、どのようなことが起きたのか」について、お伝えします。

Mission 1 Milestones

当社はミッションのマイルストーンを10個に分けて定義していました。大体打ち上げが2022年から始まり、約4ヶ月かけてサクセス8まで成功させました。このように小刻みに分けているのには、当社の強い思いがあります。宇宙開発のミッションは、どうしても成功か失敗のいずれかだと見られがちです。確かに最終的に月面に着陸することはとても大事ですし、達成しなくてはいけないことに間違いないのですが、そこに至るまでに色々と進化させなくてはいけない技術があります。そういうものを積み重ねていくこと自体がものすごい進化で、当社にとって大事なことだと思っています。それをきちんとお伝えしたく、このようにサクセスの定義を10個に分けました。

 

例えば、マヌーバというものがあります。ランダーは衛星よりもさらに大きな燃料エンジンを積んでおり、噴射しながら月に向かって動きますが、このようなパフォーマンスがしっかりと月に向かって実現できるかどうかは、1つの技術チャレンジでした。

 

また、放射線が降り注ぎ、熱の状況も地球と異なる宇宙環境において、きちんとハードウェアが機能するのか、通信がしっかりと確立できるのかはとても大事なハードウェアの要件となります。

 

サクセス1から始まって8に至るまでに、色々なチャレンジがありました。管制室では毎日不具合を克服しながら、パフォーマンスを上げていき、ハードウェアは非常にいいパフォーマンスを実現することができました。通信/構造/推進系等に関しては、とてもいいパフォーマンスができました。しかし、残念ながら当社は月面に着陸することができませんでした。

 

 

なぜサクセス9で着陸できなかったのかについてご説明します。

サクセス9は非常に惜しいところまで行くことができました。月面に着陸する時は、上空からランダーが体勢を縦にしながら徐々に着陸していきます。そして、時速何千kmというスピードから、最後は逆噴射しながら秒速約1mというスピードに落として、月に向かってゆっくり降りていきます。当社はスライドの黄色いところで、月面に向かって体勢を垂直に立てながら、徐々に安定した状態で降りていくところまで達成することができたことを確認しています。残念ながらこの状態で燃料が切れて、そのまま下に落ちてしまったのが当社のミッション1でした。

 

1番難しいところは、まっすぐの体勢に立て直して、安定したバランスで降りていくことです。当社は本当に惜しいところまで持っていくことができたと思っています。

着陸フェーズ

なぜ最後に燃料が切れてしまったかというと、想定外の高度変化が発生し、当社のセンサーがそれを異常と捉えてしまったことが問題でした。

 

月面着陸の直前に、高度センサーが瞬間的に急激な高度変化を感知しました。当社のランダーは、急激な変化が起きると何か問題が起きたと判断するように設計されています。急激な高度変化を異常が発生したと感知したランダーは、センサーによる高度認識の情報を使わない判断をしました。しかし、実際は、瞬間的な高度変化という情報は間違っておらず、それは正しい情報でした。実際に、月面に高さ約5kmの急激な崖があり、これが着陸する直前に通過した地形でした。

 

約5kmの崖というと、富士山がすっぽりと入ってしまう程の大きさです。これが月の環境の特殊なところで、当社も地球からは想像しにくい点でした。月には大気がなく真空状態で、当然水もなく川も流れていません。そうすると、土地の浸食が起きないため、約5kmもの崖が存在してしまうのです。そのため、瞬間的に数秒の間で高度変化が起きました。しかし、センサーによる高度認識の情報を使わないと判断したランダーは、スライドにあるような高さにいながらも、もうすぐ着陸するはずだと考えてしまっていました。実際にはこの崖が存在したため、最終的には燃料が切れて下に落ちてしまいました。

 

このように、非常に惜しいところまでランダーを持っていくことができたというのが、当社のミッション1だったと考えています。

 

 

これが月の地形を3Dデータから起こした画像です。ランダーはスライド内の白いラインを通って4時35分、そして37分に瞬間的に崖を通過しました。そして、瞬間的に高度が上昇したことによって着陸直前に高度認識を誤ったと判断し、着陸地点の上空でホバリングのような形になって落ちたのが当社のミッション1でした。

 

振り返ってみると、当社自身も分かっていればと思うところもありますが、月の情報というのは全て事前にインプットすることができない部分があります。ある程度の情報は揃っていますが、シミュレーションができる範囲が限られている中で、当社の想像が及ばないところがあり、残念ながらシミュレーションが足りていなかったことがミッション1が失敗した背景になります。

HAKUTO-R

当社はミッション1が失敗した背景を把握することができています。ミッション2では問題点を直して、精度を上げることを行っています。

 

当社はミッション1と2の2つをやっていますが、これを総称して「HAKUTO-R」というプログラムにまとめています。ミッション1と2では、同じデザインのランダーを使うため、このようにプログラムをまとめています。

 

あえて同じランダーを使って、もう一度ミッションを行います。ハードウェアは、ミッション1でしっかりと実証することができたと思っています。ミッション1で色々なデータを取ることができたので、それらのデータを使って精度を上げるために、あえて同じランダーを使用します。

 

2024年の冬にミッション2を打ち上げる予定で、現在最終準備が進んでいるところです。当社は、月面に着陸した後に月面を探査するローバーという小さな4輪車を自社で開発しています。ミッション2では、ローバーをランダーに積んで色々な探査をすることも予定されています。ミッション2に向けて技術の成熟度の向上を目指したいと考えています。

 

JAXAの設備をお借りしてミッション2の組立作業をしており、こちらの動画が数ヶ月前の製造の様子です。

 

もう組み立ては完了しており、最終の環境試験を終えたら打上げ場所へ持っていく状況にあります。

 

余談ですが、動画の中で金色のものがランダーをくるんでいる様子をご覧いただいたかと思いますが、なぜ金色かご存知でしょうか?あれはMLIという断熱材で、宇宙は真空状態であるため、太陽の光を受けるとものすごく温度が上がってしまいます。その熱を遮断するために、金色のMLIという膜を貼って、温度変化に耐えられるようにしています。車のようなオートメーションとは違って、ひとつひとつ手作りで、エンジニアが不具合がないかを何度もチェックするという緻密な作業を行っています。

ispaceが取り組むビジネスとは?

当社がどのようなビジネスをしているのかについてです。

主要サービス

現在、当社はいくつかサービスを行っています。最もコアなサービスで売上を立てているのがペイロードサービスです。ペイロードとは、お客様の荷物のことを指します。端的に申し上げると、宅配便です。お客様からお預かりした荷物を月に届けることで、お金をいただくという事業です。普通の宅配事業は、一時的に荷物を預かって運びますが、月の場合は1年も2年も前から荷物を預かり、当社のランダーに載せて、きちんと組み合うかどうかの試験を丁寧に実施した上で、月に持っていきます。

事業環境

「誰が何を月に持っていくのか」「需要はあるのか」と疑問に思う方も多いと思います。スライドは、月の上に作られることが想定されている月面基地のようなもののイメージです。アメリカのNASA主導で、Artemis計画という月に行く計画が動いています。日本を含む43の国が参加しており、月面に向けて色々なものを運んで月面開発・探査をするという、莫大な資金を使ったプロジェクトです。その中で、スライドのような基地が作られることも想定されており、資材/通信機器/発電設備/モビリティ等を持っていく必要があります。このような輸送ニーズをとるべく、当社は事業として展開しようとしています。

 

 

Artemis計画で人々が月に行こうとするのは、単に冒険心ではなく経済的な理由があります。月には色々な資源があると言われており、その中でも1番貴重なものが水資源です。なぜ水が大事なのかと言うと、H₂Oを電気分解すると液体水素と液体酸素に分けることができます。液体水素と液体酸素は、現在最も効率の良いロケットの推進燃料です。エネルギー資源を月で採る、あるいは作ることができれば、安いコストで新宇宙と言われる火星や小惑星等に行くことができるようになると言われています。火星や小惑星等に行くには時間もお金もかかり、非常に大変です。しかし、そこには地球上にはない未知のものがあると言われています。新宇宙に容易にアクセスして、そういったものを手に入れることができれば、新しい発見があるかもしれません。

 

それだけではなく、もう一つとても大事な意義があります。現在、私たちの生活は衛星のインフラなしでは成り立たなくなっています。例えば、GPS/気象衛星/インターネットの通信等は、地球の周りを回っている何千機もの衛星なしでは、現在の豊かな生活を維持することが難しくなるという課題があります。衛星は燃料切れで寿命を迎えてしまうため、そのたびに地球から打上げるのか、残ったものはゴミになるのか。再度打上げるためにはお金もかかりますので、燃料を再補給する必要があります。

 

現在、宇宙の燃料補給技術の開発が進んでおり、月で水のエネルギーを作ることができれば、月から衛星に燃料補給をすることができます。そして、人類の生活を守るためのインフラを維持することができます。月はそういったことができる価値があると言われています。そのエネルギーを求めて、2000年代以降から月面の開発をする動きが進んできました。

 

地球にも水があるのに、なぜ月でなければいけないかというと、ポイントは1/6の重力です。地球から抜け出すためには、強い重力から抜け出さなくてはならず、そこにものすごいエネルギーとコストがかかってしまいます。ロケットを飛ばす時に、煙が上がっていく画像をご覧になったことがあるかと思いますが、あの工程にものすごくお金がかかっています。一方、月は地球の1/6の重力と言われています。しかも、大気がありません。ということは、月でエネルギーを作ることができれば、少しのエネルギーで新宇宙まで行くことができます。つまり、圧倒的に安いコストで行けるようになるため、移動する回数も増えます。月から新宇宙への往来をするためには、安い価格でエネルギーを作らなくてはいけません。これが月でエネルギーを作る意義です。そのために色々な人たちが月に荷物を持っていきたいと考えており、当社はそれらを運ぶビジネスをしています。

ハードウェア

当社はハードウェアをいくつか持っています。先ほどご覧いただいたのが、RESILIENCEランダーというミッション1で使ったもので、ミッション2でも持っていくランダーです。当社は次の開発を進めており、当社のアメリカの子会社ではAPEX1.0という少し大きなランダーを作っています。なぜ少し大きいかというと、お客様の大きな荷物を月に持っていくためで、当社は商業化をする予定で動いています。日本ではシリーズ3ランダー(仮称)の開発が進んでいます。アメリカと日本の2つのチームでランダーの開発を進めており、ミッション3(2026年)・ミッション6(2027年)にて打上げる予定で開発が進んでいます。ミッション2は2024年に打上げます。また、TENACIOUSという非常に小さいマイクロローバーをルクセンブルクの子会社で作っています。このように世界中で日本/アメリカ/ルクセンブルクの3拠点で開発を進めています。

ミッション計画

スライド内のピンクの部分は、ミッション2・3・6の3つのランダーを作っています。APEX1.0は出来上がった後に量産化して使っていく予定で、ミッション4・ミッション5として打上げが予定されています。このように当社は先に向けたミッションを行っていく予定です。

なぜispaceが世界競争に勝てるのか?

当社が世界競争に勝てると考えているポイントについてです。

①強い政府からの受注_各国の方針

強みの1点目は、政府から非常に大きな受注をもらっていることです。政府は補助金だけではなく、発注をしてくれており、宇宙関連はものすごいスピードで民営化が進んでいます。全てをJAXAやNASAといった宇宙機関が行うのではなく、民間企業にできることは民間企業に発注をして、サービスを買っていこうという流れになっています。一部は既に動いており、アメリカのCLPSプログラムではNASAから発注を受けて、月に荷物を運ぶサービスを提供します。

①強い政府からの受注_日本

日本では、宇宙戦略基金というものが動き始めています。宇宙戦略基金とは2023年に発表されたもので、政府が10年間で1兆円を宇宙開発に使うことが決まっています。第1期として3000億円の公募が始まっており、色々な企業がこのお金を使って、月を含む宇宙に向けた開発を始めています。宇宙戦略基金には莫大な資金がついており、世界中から注目されています。

 

また、当社はSBIRという補助金(120億円)を経済産業省からいただいて、ミッション6(シリーズ3ランダー)の開発を進めています。以上が、政府から強い支援をいただいているという日本の事例になります。

①強い政府からの受注_米国

アメリカでは、NASA CLPSというものがあります。CLPS(=Commercial Lunar Payload Service)は、民営化されたペイロードサービスです。2018年から始まっていますが、約26億米ドル(現在の為替で4千億近いお金)がNASAからついています。一部を当社は受注しており、55百万米ドル(日本円にして約70億円)の受注が確定しています。こういった強い関係性が当社の強みの1つです。

②月ビジネスの先駆者

当社と同じような事業をしている競合は、3社ほどいると思っています。それらは全てアメリカの企業で、日本で同じような事業を行っているのは当社だけです。当社が知る限り、ヨーロッパにも競合はいません。アメリカに競合が3社いる中で、当社がどのようなポジションにいるかというと、アメリカの3社とは長い間お互いを知っている関係で、Astrobotic社とは10年以上前からお互いに存在を認識しています。彼らもスタートアップ企業ですが、当社はその中でどこよりも早く打上げることができました。いずれの企業も同じような時期にランダーの開発を始めましたが、当社は2017年から開発をして、どこよりも早く(2022年12月)打上げることができました。そして、ミッション1で月面着陸にトライしたという意味では、フロントランナーとして早いスピードで動いていけると思っています。

 

Intuitive Machines社が、2024年2月(当社の打上げから1年後)に1回目のミッションを実施して月面着陸をしました。非常に素晴らしい成果だと思っていますが、当社は負けたとは思っていません。先ほど申し上げた通り、技術開発の面で当社の技術が劣っているとは決して思っていません。今後ミッション2を行っていきますが、さらにクオリティの高いミッションを実施したいと思っています。当社のポジショニングは非常に強い位置にいると考えています。

③グローバル展開

競合である3社はいずれもアメリカの企業です。当社の強みは、3つの拠点にエンジニアを置いている点です。日本にはベースがあり、アメリカには100名以上の従業員がいて、ランダーを作っています。ルクセンブルクには30名超の従業員がいて、ローバーを作っています。なぜ3つの拠点を置いているのかというと、世界中の宇宙機関から需要があるためです。JAXAだけではなく、NASAからも需要があり、ヨーロッパにはESAという宇宙機関があります。それだけではなく、ミッション1ではドバイの宇宙機関やカナダの宇宙庁の荷物をお預かりしました。世界中の宇宙機関と関係を作り、それぞれの需要をしっかりと獲得することができる拠点を置いているのは当社だけです。これが当社の3つ目の強みです。

④資金調達力

4点目の強みは、資金調達力です。

お客様から依頼を受けるまでに時間がかかります。そういった中では、投資家の皆様から頂いたお金を使って開発を進められることが非常に大事になっています。これまでにエクイティでは344億円を調達させていただきました。そして、銀行からは300億円以上の借り入れをすることができています。このように、非常に多額のお金をエクイティでいただいたり、融資でいただくことができているのは、しっかりとしたビジネスモデルを高く評価いただいているからだと思っています。資金調達力においても、当社は他社よりも抜きんでている存在だと考えています。

⑤経営陣

強力な経営陣についてです。

スライドの左側が取締役で、右側がCXOです。多様な人材が揃っており、取締役は社外からも多くの方を招き入れています。日揮株式会社の元社長である川名さんは、世界中の大規模なオイルプロジェクトの管理に精通しています。そして、株式会社IHIエアロスペース(日本を代表する宇宙企業)の元社長である牧野さんは、エンジニアリングの開発に精通しており、日々色々な教えやご指摘をいただきながら開発を進めています。また、経営陣においても多様なバックグラウンドを持つ強いチームを作って経営を進めています。

⑥壮大なビジョンに共感いただくパートナー

長期ビジョンとして、当社は単に月に行きたいから行っているわけではありません。地球の生活を豊かにするような、エネルギーを中心とする経済圏を月に作るというのが当社のビジョンであり、強みです。

終わりに:そしてミッション2へ!

当社がどのような思いでミッション2に向けて動いているのかについて、先日行った株主総会にて経営陣がお伝えしたメッセージを動画にてご紹介します。

 

 

2024年の冬に当社はミッション2を打上げる予定で、今月から色々なイベントを予定しています。今後、追加で情報を発信していきますので、是非当社のSNSやホームページをご覧いただければ幸いです。

 

 

また、先日、株主優待制度も発表させていただきました。魅力的なパッケージをご用意していますので、是非ご参加いただければと考えています。ありがとうございました。

質疑応答

質問①:2024年の冬に打上げとなるミッション2に関連して、今後様々な発表やイベントを予定しているとのことですが、直近ではどういったものを予定されていますか?

 

野﨑:もうすぐ告知がされると思いますが、9月12日に最新のランダーの様子を公開します。メディアイベントも行い、YouTubeでもライブでご覧いただくことができます。

⇒【ispace公式配信】RESILIENCEランダーお披露目発表(2024年9月12日公開済み)

 

 

質問②:宇宙開発をされたきっかけや会社の成り立ちについてお教えください。

 

野﨑:私自身は創業社長ではありませんが、創業社長の袴田が2010年に会社を創業しています。元々のきっかけは、当社はランダーではなく、4輪車のローバーを開発する企業でした。当時、Googleがスポンサーをする「Google Lunar XPRIZE」という月面に行くレースがありました。このレースに参加するチームが会社の母体になっています。XPRIZE財団はレースを通じて技術革新を生もうとする団体です。そのうちの1つが、今から14年も前に実施された月のレースで、先ほどご説明したアメリカの競合であるAstrobotic社も、その時に参加していました。そこから約15年が経って、このように花が開いてきているという現状かと思っています。

 

 

質問③:国内に競合がいないということは、国内の補助金は全て御社が得るという理解で合っていますでしょうか。

 

野﨑:宇宙戦略基金は、月だけではなく色々な宇宙の領域に使われるものです。また、月に関するものは当社だけではなく様々です。例えば、月の周りの通信に関するもの等、補助金の使い道は当社だけではありません。ただ、月面への輸送に関しては、当社が知る限り日本では当社しかやっていないので、当社がしっかりと取り組んでいけるエリアだと考えています。

 

 

質問④:中国が月面探査でニュースになっていましたが、中国には御社のような企業はないのでしょうか。

 

野﨑:中国は月の探査において、アメリカよりも進んでいるかもしれないと思っています。嫦娥という宇宙船が月に着陸して、サンプルリターンといって、物を持ち帰るところまで実現しています。中国は国としてあのようなミッションを行っているという理解ですので、当社が知る限り同じような民間企業は存在しないという認識でいます。

 

 

質問⑤:開発資金の調達は順調でしょうか。

 

野﨑:毎年資金調達をさせていただいており、開発に大きな資金が必要ですので、「必要資金が全て揃っています」と申し上げることができる状況にはありませんが、これまでに株式や銀行ローンでそれぞれ300億円超の資金調達をさせていただいています。継続的にご支援をいただくことができていますので、調達は順調に進んでいると思っています。

 

 

質問⑥:ミッション2が成功するとどのような段階に進むのか、中期的なビジョンを伺いたいです。また、安定して黒字になるのはいつ頃の見込みでしょうか。

 

野﨑:まず、ミッション1とミッション2は当社のHAKUTO-Rというプログラムで、これは研究開発として続けています。ミッション3から商業化し、少し大きなランダーを使ってより大きな荷物を運びます。すなわち、より大きな売上を立てていく予定です。ミッション1とミッション2で着陸の精度を上げ、技術の成熟度を完璧なものにして、ミッション3以降でビジネスを大きく膨らませていくというのが、今後の展望です。その中で、どのようにして売上だけではなく、黒字まで収益を出していくのかが非常に大事なところです。

当社が収益を出す方法は2つあります。1つは、売上を伸ばすという方法です。もう1つは、コストを下げるという方法です。コストを下げるのは非常に大事なことです。これまでのJAXAやNASAが行ってきた宇宙開発は、1点もので研究開発を目的として膨大なお金をかけて作るというものです。当社の場合は、お金をかけて作ったものを量産化して、何回も使っていくということをします。そうすると、当然安い価格で作れるようになります。実際に、ミッション1とミッション2を比較してもコストは削減されています。

 

売上に関しては、ミッション1とミッション2では最大30㎏までしか持っていけないところ、ミッション3からは最大300㎏まで持っていくことができるため、10倍以上の荷物を持って行くことができるようになります。その後は500㎏まで増やしていくということをします。このようにして売上を伸ばしていくことで、当社は向こう数年の間に、各ミッションで収益が出るようにして、黒字化していきたいと考えています。

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