24/3/17【LIFULL】日本最大級の不動産住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」の強化に加え、海外展開も加速 25年9月期までに営業利益は過去最高の50億円超に(23年9月期は同19億円)
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スピーカー
株式会社LIFULL グループ経営推進本部 IR・サステナビリティ推進グループ / コンラッド・ ジョーダン 氏 同 IR・サステナビリティ推進グループ長 / 吉田 和弘 氏
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提供
LIFULL
はじめに
コンラッド・ジョーダン氏(以下、ジョーダン):本日は株式会社LIFULLの紹介をした上で、第1四半期の決算について詳しくご説明します。
本日のポイント
本日は4つのポイントを覚えていただきたいと思っています。株式会社LIFULLは、LIFULL HOME’Sという不動産ポータルサイトを運営している会社で、日本国内だけではなくグローバルに事業を展開しています。また、全ての事業は社会課題の解決に向けて取り組んでいる会社でもあります。最後にステークホルダーへの配慮についてお話しする中で、第1四半期についてもご説明したいと思っています。
LIFULL HOME'S
LIFULL HOME’Sは日本最大級の不動産住宅情報サイトです。これから引っ越しを検討されている方は是非LIFULL HOME’Sをご覧ください。LIFULL HOME’Sには面白くて使いやすい機能がたくさんついています。よりスムーズな住み替えができるような新しい機能と使い方を常に開発しています。
LIFULL HOME'Sの代表的な収益モデル
物件の情報をさらに増やしていくために、2つの料金モデルを導入しています。当社では一般的な掲載課金モデルに加えて、成果報酬に近い問合せ課金モデルも導入しています。大きな変動があまり起きない新築市場のマーケットにおいては、一般的な掲載課金モデルが非常に有効的だと思いますが、物件の変動が激しい賃貸と中古売買においては、問合せ課金モデルの方が有効的だと思っています。
一般的な掲載課金モデルは1件いくらという計算になり、物件が増えれば増えるほど当社の売上が増えていく形になります。このモデルだけでは、当社のクライアントである不動産会社さんが掲載する物件を「たくさんの問合せが見込める物件」だけに抑える可能性があるため、当社では問合せ課金モデルも導入しています。
問合せ課金モデルでは、月額の会員費で物件が掲載し放題で、入ってきた問合せの数ごとに課金されます。ユーザーは選べる物件が増加しますし、クライアントの売上拡大に連動して当社の収益拡大を目指せるというように、クライアントと目線合わせができる形になっています。
不動産情報の質
当社では物件の質を担保する手段をとっており、競合との差別化の1つになっています。正しい最新の情報が常にLIFULL HOME’Sに掲載されるように、社内には情報審査チームが存在し、正しくない情報、あるいはおとり物件だと思われる物件が発見された際には、不動産会社に警告をして、掲載を取りやめてもらうように依頼しています。頻繁にルールを破る不動産会社に対しては、掲載を停止するケースもあります。このような手動の手段に加え、不動産管理会社が持っているデータベースを当社側に読み込んで、空室ではない物件は自動的にLIFULL HOME’Sから掲載を削除することが出来る仕組みも存在します。
また、ユーザーご自身も「掲載110番」というボタンを使って、当社に情報の間違いやおとり物件の可能性があることを通報することができる仕組みをサイトに導入しています。直近では、自社開発のAIによるおとり物件の検知精度が87%まで向上しており、2024年1月から放送されているテレビCMでもLIFULL HOME’Sの物件情報の確かさを訴求しています。
不動産投資領域
株式投資だけではなく、不動産投資に興味がある方もいらっしゃるかと思います。LIFULLグループでは、不動産投資領域の情報も提供しています。
健美家
LIFULL HOME’Sは実需部分の掲載が多いですが、2020年から不動産投資領域の情報サイト「健美家」をLIFULLグループの傘下に入れており、不動産投資の領域を強化しています。昨年はLIFULL HOME’Sの不動産投資ページに掲載されている物件のデータベースと「健美家」にある物件のデータベースを統合させて、現在は6万件以上の掲載があります。かつ、「健美家」にはアクティブな不動産投資家コミュニティがあります。その中には不動産投資に関する記事やセミナーも多く存在するため、ご興味がある方は是非一度「健美家」をご覧ください。
事業概要
当社の事業は大きく3つのセグメントに分かれています。
これまで説明したのがHOME’S関連事業です。ここからは海外事業とその他の部分についてご説明します。
海外事業は既に全体の売上の23%、約1/4まで成長してきています。そのため、グローバル展開をしている企業と言っていいかと思います。
海外事業の概要
日本以外の不動産情報へのアクセスのしやすさは、国によって状況が大きく違います。各国の不動産情報にアクセスしやすくするために、当社は各マーケットの状況に合わせて最適なサービスを提供しています。例えば、既に大きな不動産ポータルサイトが存在しているヨーロッパと北米においては、アグリゲーションサイトを提供しています。アグリゲーションサイトは、インターネットに出ている物件を全て集約して、1つのサイトにしたものです。
一方、HOME’Sと同じような大きなポータルサイトが存在しない地域、もしくは小さなポータルサイトしか存在しない地域に関しては、不動産ポータルサイトを展開しています。
さらに、タイでは実務に近い事業モデルを行っている「FazWaz Thailand」という会社を2023年2月にM&Aしました。これにより、住み替えファネルを全てカバーできています。かつ、実取引に近づけば近づくほど単価が上がり、提供価値も上がっているため、これからも住み替えファネルの下の部分である「検討」と「成約」に注力して、拡大していきたいと思っています。
海外事業の成長戦略
先ほど単価の高い取引に近づいているという話をしましたが、どのぐらい進捗しているのかについてご説明します。
2022年9月期をご覧いただくと、アグリゲーションサイト(グレーの部分)が売上のほとんどを占めていましたが、2023年からポータル(黄色の部分)とDXエージェント(オレンジの部分)が増加して、今期の2024年9月期の予算では、それらが1/3ぐらいまで成長するという見立てをしています。ここに寄与するのがタイの孫会社とラテンアメリカのポータルサイトです。これにより、当社が望んでいる形に進捗していると見ています。
社会課題の解決
三つ目の領域であるその他の部分についてご説明します。
その他の事業だけではなく、当社が運営する全ての事業は社会課題の解決に基づいて展開しています。LIFULL HOME’Sは全ての人が正しい不動産情報にアクセスできるように情報を提供しており、海外も各地域のあらゆる課題を解消しようと取り組んでいます。その他のセグメントでは比較的小さめの事業が多く含まれており、それぞれが社会課題の解決に向けて取り組んでいます。
超高齢化社会
LIFULL seniorは高齢化社会の解消に向けて取り組んでいます。解決というところまでは行きませんが、仮に日本の高齢化が進んだ場合、その高齢者が住む場所を確保しなければならず、それをご自身で探すのか、ご家族が探すのかも考えなければならないと思っています。
そこで「LIFULL介護」というサイトを開発しました。今では日本最大級の介護施設の情報サイトになっており、57,000件ほどの情報が掲載されています。サイトで情報を提供するだけではなく、本当に住みやすい理想の住まいが見つかるように当社から支援もしています。おかげさまで売上も年々成長しており、これからも伸びていくと思っています。
LIFULL seniorと同じように当社のノウハウと技術を使いながら、事業を通じて社会課題に取り組むことで、持続可能な収益の拡大と企業価値の向上を目指していきたいと考えています。
LIFULLグループの経営の考え方
ここからはステークホルダーへの配慮と決算についてご説明します。LIFULLグループは公益志本主義という考えのもと経営しており、全てのステークホルダーを重んじるガイドラインが社内にはあります。全てのステークホルダーの中には、もちろん株主様も含まれています。既にご覧になっている方もいらっしゃるかと思いますが、2024年2月に第1四半期の決算が発表されました。そこで一部心配を招いた部分があるかと思いますので、少し詳しく説明させていただきます。
2024年9月期第1四半期 連結サマリー<売上収益>
売上は昨年対比で約7億円増加しました。内訳は、HOME’S関連事業からプラス約1億円、海外事業からプラス約6億円です。約6億円のうち、約5億円が昨年に実施したM&Aの2社(タイの「FazWaz Thailand」とメキシコの「Medios de Clasificados」)によるものです。
その他の部分がマイナス0.5億円なので、仮に海外の5億円を除いても、国内/海外両方ともに実質的に1億円の増収になっています。そこにM&Aの5億円がプラスされているため、売上は順調に増加していると見ています。
2024年9月期第1四半期 連結サマリー<営業利益>
営業利益についてです。
特に決算が望ましくない時にこそ、丁寧に説明する責任があると思っているため、この点は少し丁寧にご説明します。
今回は一部想定外の要因があり、見た目がよくないと思われるかもしれません。一時的な要因が前期と今期の両方に入っています。営業利益は、HOME’S関連事業がプラス0.9億円、海外がマイナス4億円で、その他を含め、マイナス8.7億円となりました。一時的な要因として、前期には楽天LIFULL STAYの株式売却6.6億円が含まれており、今期の部分は海外の経営体制の変更に伴う退職金等の費用でマイナス1.9億円になります。そのため、実質的にマイナス0.2億円になりました。
「増収しているのになぜこのような減益になっているのか」という質問に関しては、LIFULL HOME’Sは約1億円ぐらいの増収になり、利益も0.9億円になりました。海外は実質的にマイナス4.1億円で、その理由はアグリゲーションサイトの減収に加え、減少したトラフィックを確保するために一部のコストが増加したためで、利益率が多少下がったということになります。
海外が足を引っ張っているとご懸念いただくこともありますが、当社としては、海外は収益の第2の柱として業績の拡大が非常に重要だと思っており、今期はアグリゲーションサイトの収益性を回復させながらポータルサイトと実務の部分の比率を高めていく方針となっています。
海外事業の新体制について
それを実現するために経営体制を変えており、2023年12月から宍戸がLIFULLグループの取締役、LIFULL海外子会社「LIFULL CONNECT」の取締役にも就任し、「LIFULL CONNECT」のCEOとしても就任しています。宍戸がグループ内の主要な意思決定機関に参画することで、最終的な意思決定のプロセスをさらに加速することができると考えています。
株主還元 基本的な考え方
株主還元についてです。
当社は事業から出た利益を4分配しています。その分配した利益を4つのステークホルダーに還元しています。まずは、社会(税金)です。企業(内部留保)は、将来の成長投資のために内部留保として用意しています。株主の配当金と社員の賞与は利益に応じて計算しており、利益が増えれば増えるほど配当金も増えますし、社員の賞与も増えていきます。
株主還元 配当金について
配当金に関して、配当性向は原則として当期純利益の25%で計算しています。スライドのグラフをご覧いただくと、直近の決算では一時的な要因を除いて計算した結果53%となっています。
中期経営計画(2025年9月期まで)
中期経営計画についてです。
2025年9月期までに過去最高の営業利益(50億円超)を目指しています。それに向けて、選択と集中をとってポートフォリオを整理し、より本業に集中できるような体制に整えてきました。今期は売上の成長に向けて投資を続けており、来期は利益をジャンプアップさせることができると思っています。そのため、今後も不動産/暮らし/住まいに関する国内のLIFULL HOME’Sに加え、海外事業等を通じて社会課題の解決を目指し、事業から出た利益を皆様にも還元したいと思っています。是非今後とも応援をよろしくお願いします。
質疑応答
質問:PBRが1倍を超えておらず、株価も低迷していますが、株価対策について何かお考えでしょうか。
ジョーダン:PBR1倍割れに関しては、よく株主様から自社株買い等、配当性向をもう少し上げてもよいのではないかというお声をいただいており、2023年に自社株買いを実施した結果、一時的な上がりはありましたが、それが長期的に続くことは考えづらいと考えており、より実質的に持続可能な形で企業が提供してる価値を上げていく方が、株価にも影響すると思っています。
質問:HOME’Sについて、競合環境はどのようになっていますか。また、シェアはどの程度ありますか。
ジョーダン:HOME’Sの競合環境は、日本においては不動産ポータルサイトが3つほどあり、HOME’Sは真ん中ぐらいになっています。1番がSUUMOさんで3番目がアットホームさんです。それぞれのポータルサイトの機能面は非常に似ていますが、当社にはいくつか差別化のポイントがあります。まず、情報の質と鮮度を担保しているという点が1つです。また、海外展開をしている点も1つです。さらに、日本における競合だけではなく、全世界の競合がどうなっているのかも見ているため、それを参考にして良いものは日本にも持ってきています。その他には、ユーザーファーストというアプローチをとっており、様々な機能を開発しているという点です。どうやって住まい探しの悩みを解消して、より探しやすくするためにはどのような機能があったら良いのかをユーザーの視点で考えて開発しています。
質問:社長が交代しましたが、それによって社内の雰囲気はどのように変わりましたか。
ジョーダン:非常にいい質問ですね。元々は井上高志(以下、井上)が創業者でもあり、2023年12月まで代表取締役社長を務めていました。現在は伊東祐司(以下、伊東)が代表取締役社長を務めており、LIFULL HOME’Sも担当しています。
社内の雰囲気がどう変わったかについてですが、創業者である井上はまだ在籍しており、管掌範囲が多少変わりました。伊東はLIFULL HOME’Sに加えて、その他の国内事業も見ており、海外や地方創生は井上が見ています。そのため、社長が交代したことで大きく変わったと感じているところは、HOME’Sにおいて改善意欲が上がってきている点です。特にAI関連の話もかなり出てきており、まだ公開されていないお話はできませんが、さらにユーザーに寄り添った提案を、大小さまざまな機能開発によりおこなっています。
質問:現在DOEが高いとは思えませんが、株主への配慮としてDOEについて今後どのように考えますか。
吉田:先ほどもPBR1倍割れの話と通ずる部分ではありますが、当社の株価をどのように上げていくかに関しては、しっかりと事業の状況を分かりやすく説明するだけではなく、事業の実績を上げていくことが重要だと思っています。その上で株主還元に関しては、いくつか考えている部分があります。例えば、ここ数年は株主優待を検討したことがあります。ただ、当社自身の商品はサイトしか存在していないため、皆さんにお渡しするような商品がありません。そのため、具体的にどのようなものがあればよいのかに関しては、皆さんからの意見も積極的に取り入れていきたいと考えています。何かご意見があれば連絡をいただければと思います。
それ以外の部分として、配当を上げていくことに関しては、当社はおそらく5年くらいに1度、配当性向を見直しています。私が入社した時は配当性向は15%でしたが、そこを20%、25%と引き上げています。これは投資するものがないわけではなく、今後も海外の部分をしっかりと成長させていきたいと思っていますが、やはり先ほど説明した通り、利益を4分配するという会社の考え方をベースに、1/4を株主様に配当することを考えると、本来であれば配当性向は50%まで上げなければ1/4にはなりません。そのため、会社としてはどこかのタイミングで配当性向を50%まで引き上げていくことをベースの考えとして持っています。時期を見ながら検討し、実施していく形になろうかと思います。
最後に少し話はずれますが、今後どのように事業を成長させていくかについては、海外の大型M&Aによって当社にはかなり大きなのれんがのっています。これが大体100億円ぐらいで、のれん自体に海外の事業の価値が追いついていないのではないかという懸念を市場の方々から持たれている結果、PBRが1倍を割っているのだろうと当社は考えています。
今回は直近の決算について話しましたが、3年前ぐらいに海外子会社は2度連続で減損となっています。ここで海外の事業に対して、不安やご心配を多くいただきました。今後もそのようなことが続くことなくしっかりと成長していくために、現在の当社は体制を刷新し、事業成長に向けて様々な投資をしているタイミングです。数字に関してはできるだけ分かりやすく内訳を開示していきますので、そのあたりを見ていただき、評価いただければと思っています。
質問:今後どの事業を1番注目してほしいですか。
ジョーダン:この1年2年で事業の整理を続けており、より本業に集中していきたいと考えています。そのため、LIFULL HOME’Sに加えて、海外の実取引に近い部分を伸ばしていきたいと思っています。LIFULL HOME’Sに関しては、当社の決算説明資料の中で「SUPER HYPER ASSISTANT」という言い方をしているのですが、なるべくたくさんの問い合わせがあるだけではなく、その問い合わせの質を上げて、不動産会社により高い価値を提供できるような仕組みを作っていきたいと思っています。それを実現するために、サイトの各機能の開発やAI等の新しい技術を使って、物件結果を1人1人に合った方法で表示させることで、より質の高い問い合わせをクライアントに提供できるのではないかと思っています。
海外では、アグリゲーションサイトは1クリックあたりが大体1円2円になっています。もちろんそこにフォーカスせずに回復させたいと思っていますが、営業を強化しながらリソースをポータルサイトと実務にフォーカスしたいと考えています。
なぜならば、ポータルサイトは1掲載あたり、大体数百円から数千円ぐらいの価値があるからです。実取引をされている方は仲介手数料か何かを払っているかと思いますが、それが数万円から数百万円という大きな単価になるため、そこの部分をもう少し取っていきたいと思っています。ただ、それができる市場が限られているため、現在タイで行っている事業をうまく横展開できるかについては、現在社内で議論しています。
質問:10年後どのような企業になることが理想ですか。
ジョーダン:先ほどの回答に近しくなるかと思いますが、LIFULL HOME’Sはなくならないと思っています。むしろ不動産会社とユーザーの味方となって、2つの間に入ってよりスムーズな取引ができるような形にしていきます。今は各ユーザーが同じようなページを見ていますが、将来的にはLIFULL HOME’Sに訪れた際に、皆さん1人1人に合わせた見方や表示の仕方ができるような仕組みにしていきたいと思っています。もしかすると、技術が全然違う方向に進んでいく可能性もあるかと思います。とにかく、住まい探しのプロセス自体がこれからの数年で、結構変わっていくと個人的には思っています。
海外の方は、今は23%ぐらいの売上を占めていますが、今後日本の人口が減っていく中で、海外の部分を増やすことができるチャンスはまだまだあると思っているため、もしかすると海外の比率がかなり膨らんでいく可能性が見えてくるのではないかと思います。
一部の国では取引に近いような形を含め、国や市場の状況に応じて最適な商品とビジネスを提供することが大前提になってくると思います。