23/12/17【東京応化工業】半導体の進化を支えるtok技術 約600億円の設備投資でサプライチェーンをより強固に!
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スピーカー
広報CSR部 部長 高須 亮一 氏
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提供
東京応化工業
本日のご説明内容
高須部長(以下、高須):当社の概要についてご説明します。東京応化工業について4つの項目に分けてご説明したいと思います。
経営理念
創業者は向井繁正で、経営理念は自由闊達な社風のもと、技術のたゆまざる研鑽に励み、製品の高度化を通じて社会に貢献するという4つの経営理念を持って、経営を営んでいます。
会社概要
当社は1940年(昭和15年)に設立し、現在80年以上の歴史を持つ化学メーカーです。お客様からは「tok」と呼ばれることが多いです。当社の事業内容は、フォトレジストという半導体の電子回路を作る上で、欠かすことのできない化学薬品を製造しており、それに付随して、半導体生産で欠かすことのできない高純度化学薬品も生産・販売しています。本社の所在地は神奈川県川崎市で、現在の社長は種市順昭です。現在の従業員数は約2,000人を超える規模となっており、昨年の売上高は1,754億円で、現在東証プライム市場に上場しています。
当社はBtoB企業で、皆様のお手元にお届けするような製品を持っていないため、会社案内の動画をご覧いただき、当社の事業内容をイメージしていただければと思います。
【 約10分 】
あなたの身近にtokのテクノロジー
ご視聴ありがとうございました。当社の事業内容を少しでも理解していただければ幸いです。皆様がお使いのスマートフォン、タブレット、パソコン、ゲーム機、車といったエレクトロニクス機器の中には、非常に多くの半導体が搭載されています。半導体を製造するために当社の技術が使用されています。
半導体の進化を支えるtok技術
半導体がどういうものかというと、仮にスマートフォンを解体すると、半導体と呼ばれるものが多く搭載されています。これをさらに解体すると、電子回路が刻まれたシリコンウエハの一片でできた電子部品があり、これらの1つ1つが半導体になります。この電子回路を作るために、当社のフォトレジストをシリコンウエハ上に塗布し、フォトマスクと呼ばれる電子回路の原盤を用いて光を当てると、縮小されてフォトレジストに転写されます。こういったメカニズムでパターンができます。
東京応化の微細加工技術
スライドから電子回路の大きさをイメージしていただければと思います。髪の毛の太さがおおよそ0.1mmあり、これを1000分の1にするとウイルスの大きさになり、さらに5分の1にすると20nmという当社が作っている電子回路の大きさになります。0.1mmの髪の毛を縦に5000等分すると、大体これぐらいの細さになり、目で見ることのできない、まさにナノテクノロジーの世界です。こういったところで当社の材料は使用されています。
東京応化工業って、どんな会社?
当社がどのような会社かを4つに分けてご説明します。
1つ目はグローバル No.1であるということで、フォトレジストの世界シェアがグローバル No.1といわれています。競合他社は、信越化学、JSR、住友化学、富士フイルムといった大手の総合化学メーカーが競合に多くいます。こういった大手の会社とも互角以上に戦えているという点がポイントです。
2つ目に、現在グローバルにビジネスを展開しています。スライドの通り日本の売上が20%を切っており、海外の売上が80%を超えている状況で、グローバルに事業展開をしています。日本国内ですと、例えば四日市にあるキオクシア、九州地方ですとソニー等がメインの取引先で、海外ですとアメリカはインテル、韓国はサムスン、台湾はTSMCといった会社と取引をしています。また、今度熊本に進出してくるJASMも当社の取引先になります。
3つ目が、グローバルニッチトップ企業100に選出されており、経済産業省が選定するニッチな分野で活躍する企業に与えられる賞です。当社は2回(2014年/2020年)選出されています。
4つ目は、2023年にJPX日経インデックス400の構成銘柄に選出されています。投資家にとって投資の魅力の高い会社として構成されており、市場からも高い評価を得ています。
事業内容①:事業構成(2022/12期)
当社の事業構成についてです。
フォトレジストを中心としており、売上全体の50%強を占めています。それらをエレクトロニクス機能材料と呼んでおり、それに加えて高純度化学薬品といわれる非常に綺麗な薬剤を製造して、お客様に提供しています。半導体の製造はゴミの混入や金属不純物の混入を非常に嫌い、異物が混入した薬剤で半導体を作ると、半導体の歩留まりが落ちてしまうため、当社は非常に純度の高い薬剤を製造し提供している点が特徴です。
事業内容②:主要製品
エレクトロニクス機能材料はフォトレジストを中心とする製品で構成されており、50年以上前からフォトレジスト事業を営んでいます。50年前ですと、電卓等のICに使われるようなフォトレジストで、古い世代のフォトレジストから現代の最先端のスマートフォンのCPUに使われるようなEUV用フォトレジスト等、様々なフォトレジストのラインナップを持っている点が特長です。それ以外にも、後工程関連材料といった、半導体のシリコンウエハ上で電子回路を作る工程が終わった後に、パッケージング化して半導体にする工程でも、当社の製品が使われています。高純度化学薬品は先ほど申し上げた通り、シンナーや、フォトレジストを現像する時に使う現像液や洗浄液等、半導体の製造工程で使う化学薬品材料を幅広く取り扱っている点も特長です。
新規事業(機能性フィルム・光学部材・ライフサイエンス関連材料)
当社は半導体用の材料も多く取り扱っていますが、それ以外にも新規事業として、半導体の材料で培った微細加工技術と高純度化技術を利用して、機能性フィルム、光学部材、ライフサイエンス関連材料といった他の分野でも使用できるような材料も、現在開発しています。将来の新たな事業の種として、現在活動しているところです。
【補足】装置事業について
当社は装置事業も行っていました。
半導体の製造装置と半導体の材料の両方を手掛けていた点が特長でしたが、装置事業に関しては、2023年3月にAIメカテック社に譲渡しています。当社は半導体の材料に特化したビジネスを推進していくこととしています。
東京応化 国内拠点
当社の国内拠点についてです。
本社は神奈川県の川崎市にあり、研究開発を行う拠点も神奈川県にあります。その他の工場は、福島県の郡山工場、栃木県の宇都宮工場、埼玉県の熊谷工場、静岡県の御殿場工場、熊本県の阿蘇工場があり、当社が提供している製品はこれらの工場で生産・販売しています。
東京応化 海外拠点
先ほど申し上げた通り、海外の売上比率は80%を超えており、当社は以前から海外進出をしています。アメリカはオレゴン州に工場があり、すぐ隣にインテルがあります。韓国は仁川に工場を設けており、近くにはサムスンがあります。台湾には銅鑼工場があり、TSMCの近くに当社の子会社があります。それ以外にも中国の子会社、シンガポールの事務所、オランダの事務所といったように、グローバルに事業を展開しています。
TOK Vision 2030
当社の成長戦略についてです。
当社は2020年8月にTOK Vision 2030という長期ビジョンを発表しています。「豊かな未来、社会の期待に化学で応える “The e-Material Global Company™″」を経営ビジョンとして掲げ、事業を推進しています。当社が取り扱う化学薬品は半導体産業の成長になくてはならないもので、e-Materialはエレクトロニックマテリアルの略ですが、こういった電子材料を用いて世の中に貢献していくことをスローガンとして掲げています。
2030年の社会 ~TOK Vision 2030~
2030年の社会を想像すると、5Gや6Gの発達等、様々な世の中の変化が想像されるかと思います。例えば、ドローン技術を使って空飛ぶ車や遠隔農業、既に動いていますがスマートホームや遠隔医療等、様々なイノベーションが生まれるだろうと考えており、当社の製品がそのイノベーションを生み出すための支えになれるだろうと考えています。情報端末・クラウド・センシング&IoT・グリーンエネルギーの4分野で、当社の化学薬品が半導体の成長を後押ししていくと考えています。
2030年にありたい姿
2030年のありたい姿として、長期ビジョンは2020年に発表しましたが、2030年に2,000億円の売上を達成したいと考えています。後ほど説明しますが、足元ではかなり近い数字まできています。ただ、2020年は1,000億円を超えるくらいの売上であったため、10年で約2倍の売上を目標として、2030年のありたい姿として設定しています。
現在、半導体産業は大きく変わってきており、売上高2,000億円は2030年よりも前に達成できそうですので、数字の見直しをしています。来年になると、2030年のありたい姿を少しアップデートして発表できるかと考えています。
tok中期計画2024
tok中期計画2024についてです。
当社は2022年に3カ年の中期計画を発表しています。「2030年に向けて “Boost up TOK!!”」ということで、2024年の売上高1,800億円以上、営業利益270億円以上、ROE8%以上を維持することを目標に掲げ、事業を推進しています。
高品質製品の安定供給とグループに最適な生産体制の構築
それ以外にも、設備投資計画として3カ年で約600億円の設備投資を考えており、今後半導体産業には当社の製品がなくてはならないものになると考えているため、サプライチェーンを強固なものにして、積極的に設備投資をしていこうと計画しています。
スライドが足元で進めている設備投資の内容です。福島県の郡山市には既に工場がありますが、この敷地内に新たな工場を建設する計画を立てています。2026年下期に稼働予定で、投資総額は約200億円以上と計画しています。また、熊本県の菊池市に12.8ヘクタールの土地を購入しており、高純度化学薬品の生産工場を現在建設中です。2025年の上期に稼働を見込んでおり、投資総額は約130億円以上という規模です。また、韓国の子会社においても生産能力の向上を目的として、新しい検査設備を導入した検査棟を建設しています。投資総額は70億円以上で、かなり高額の設備投資を進めている状況です。
2023年12月期中間 業績および進捗
足元の業績と財務情報についてです。
2023年8月に中間の業績及び進捗を発表しています。2023年2月に今期の業績予想を発表しましたが、半導体の生産調整や減産の影響が強く、一時的に不況な年となっていた背景もあり、8月に下方修正をしています。2022年と比べると売上は低い上に、営業利益も低い状況になっていますが、これは一時的なものと考えており、当社の思ったように売上が進捗していない状況です。下期から徐々に回復が見られているため、来期以降は業績が伸ばせるのではないかと考えています。
設備投資・減価償却・研究開発進捗
設備投資は先ほどご説明した通り、今後も大きく伸ばしていくためにしっかりと投資を行っているところで、減価償却と研究開発についてもスライドのように推移しています。
業績の推移
スライドは過去10年の業績の状況を示していますが、2019年から連続的に高い成長率で売上は伸びており、営業利益に関しても急成長しているのが2022年の12月までの状況です。今期に関しては先ほどご説明した通り、半導体市場が不況であるため一時的に下がると考えていますが、それでも歴年で見ると過去2番目に高い売上高、営業利益が出せると考えています。
財務状況(2023年6月30日現在)
財務状況についてです。
自己資本比率が72.1%で非常に安定性の高い財務体質であると自負しています。このように高い自己資本比率の財務体質であることから、大手の総合化学メーカーと対等に渡り合うことができ、長期戦略に基づく投資計画や安定的な株主還元もできると考えています。
株主還元・配当の推移
最後に株主還元と配当の推移についてです。
当社は中長期で応援してくださる株主の皆様に末長く応援していただきたいと考えており、以前は配当方針として配当性向を採用していましたが、2018年からDOEと呼ばれる純資産配当率を採用し、現在はDOE4%を目途とする配当方針としています。今期に関しましては、中間配当/期末配当ともに82円としており、年間104円を計画しています。株主還元については、これからも積極的に取り組むことで株主の皆様の期待に応えてまいりたいと考えています。
株式の概況
株式の状況については、発行済株式の総数は4,260万株、株主数が1万198名です。スライドの右下が所有者別株式分布状況です。IRを担当していると投資家様と面談する機会が非常に多いですが、最近は海外の投資家様からの問い合わせも多くなってきています。今後も当社の事業内容をしっかりとお伝えしてまいりたいと考えています。
株式分割について(2023年10月6日発表)
2023年10月に株式分割を発表しています。3分割ということで、2024年1月から現在の株主様の株式分割をします。東証からの強い要請もあるのと同時に、個人投資家様からも要望が多く寄せられており、それにお応えする形で分割したという背景があります。
tokのホームページ
ご興味のある方は当社のホームページをご覧いただいて、より理解を深めていただければ幸いです。これからもよろしくお願いします。
質疑応答
質問:2023年10月に株式分割を発表されていますが、株式分割によって配当方針は変わるのか?株式を3分割にした背景や、今後の増配、自社株買いの可能性について、教えてください。
高須:配当方針については、DOE4%を目処とする方針に変わりはありません。これは2022年からの3カ年中期計画で設定した配当方針ですので、2023年と2024年に関しては、DOE4%という配当方針に変わりはありません。
また、3分割した背景は先ほど、ご説明した通り、東証からの要請と個人投資家様からの要望もあり、株式の流動性を高めるために必要だと判断し、分割に至りました。
増配や自己株買いの可能性については、現在当社は設備投資に非常に多くの金額を当てており、株主還元方針は繰り返しになりますが、DOE4%という考え方になっており、仮に私たちの考えている以上に余剰のキャッシュが生まれることがあれば、何かしらの形で株主還元を検討するのが当社の経営方針です。
質問:JSR株式会社が産業革新投資機構(JIC)に買収され、業界再編を主導するといっているが、御社は業界再編の影響を受ける可能性があるのか教えてください。
高須:当社の競合企業であるJSRは2023年6月30日にJICの傘下となり、非上場化するということを表明しており、JSRは業界再編が必要だろうとコメントしています。業界再編の波に飲まれてしまうのではないかというご心配をされていた方もいたかと思いますが、当社は業界再編に対してあまり肯定的ではない意見を持っています。なぜかというと、フォトレジスト業界は日本国内の会社で非常に高いシェアを持っています。当社、信越化学、JSR、住友化学、富士フイルム、この5社でフォトレジスト全体の8割から9割のシェアを持っているといわれており、日本国内の企業が統合することで国際競争力が高くなるのかというと、そこは少し疑問であります。さらに、今までこの5社(海外を含めると5+数社)で半導体の微細化技術を磨いてきたというのが半導体の歴史であるため、業界再編が進んでいくと、この先の半導体の微細化技術のスピードが遅くなってしまうのではないか、いわゆるイノベーションの生まれにくい体質になっていく可能性があるというのが当社社長のコメントです。今のところ当社は業界再編の影響を受けていないという回答になります。
質問:今期は4期連続の過去最高益の更新ができない見込みですが、来期は過去最高益を更新しそうでしょうか?また、今期修正計画の達成確度と、来期の見通しについて、足元の業績や事業環境を踏まえて、お教えください。
高須:半導体は、供給過剰になると生産調整が行われるため、当社は半導体サイクルの波を受けやすいというのが実情です。中長期的に見ると半導体産業はこれから大きく伸びるであろうということで、当社も既に設備投資を進めており、同業他社も世界各地に半導体の生産工場を建設しているため、生産工場が出来上がって生産が始まれば、また新しい需要が生まれ、さらに大きく伸びるチャンスになると考えています。
今期の計画達成確度については、2023年の前半はかなり厳しい状況でしたが、下期から少しずつですが回復してきています。起爆剤はチャットGPTといった生成AIがあり、ロジック半導体の生産が好調になってきています。DRAMの市況も徐々に回復が見られると思っていますが、NANDの市況はまだ先行き不透明だと思っています。ある一定の時間が経てば、回復してくるだろうと考えているため、中長期的に見れば伸びていく、というのが当社の考えです。
質問:個人投資家向け説明会はどの程度の頻度で実施されていますか。
高須:当社は年に約7〜8回行っており、東京、大阪、福岡、広島等、各地で個人投資家向け説明会を開催しています。